琵琶湖で、生息しているはずの無いチョウザメが見つかったとのこと。
外来生物を自然に放つのはまずいですが、どんな罪になるのでしょうか。
人の手によって外来生物の魚が放流された例は多く、日本在来だと思っていた魚が実は外来生物だったりします。
チョウザメが琵琶湖に
日本の自然界には生息していないはずのチョウザメが、琵琶湖で見つかりました。
滋賀県立琵琶湖博物館は9日、大津市沖の琵琶湖でチョウザメが定置網にかかったと発表した。琵琶湖にチョウザメは生息しておらず、同館は、飼い主が観賞用を放流した可能性が高いとみている。
チョウザメはかつては北海道の石狩川などにいましたが、今は日本に生息していません。
捕獲されたチョウザメはキャビアで有名なベステルチョウザメの可能性があり、種類を調査中とのことでした。
なお琵琶湖でチョウザメが見つかったのは初めてではなく、過去にも捕獲されたことがありました。
チョウザメはサメとはいっても性格は穏やかで、しかも歯が無いため人間に危害を与える恐れはほぼ無いそうです。
チョウザメの無断放流はどんな罪になるか
結論から言うと、チョウザメを無断放流しても罪にはなりません。
なぜなら、チョウザメは「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(外来生物法)が定める特定外来生物に該当しないからです。
それでは、外来生物法が定める特定外来生物にはどのようなものがあり、特定外来生物を放流するとどのような罰則を受けることになるのでしょうか。
特定外来生物とは
外来生物法では、特定外来生物は10の分類群(哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類、甲殻類、クモ・サソリ類、軟体動物等、植物)で細かく規定されています(環境省自然環境局:特定外来生物等一覧)。
魚類で特定されている特定外来生物は以下のとおりで、チョウザメは含まれていません。
- ガー科の全種(および同種間の交雑生物)
- オオタナゴ
- コウライギギ
- ブラウンブルヘッド
- チャネルキャットフィッシュ
- フラットヘッドキャットフィッシュ
- ヨーロッパナマズ(ヨーロッパオオナマズ)
- カワカマス科の全種(および同種間の交雑生物)
- カダヤシ
- ガンブスィア・ホルブロオキ
- ブルーギル
- コクチバス
- オオクチバス
- ラウンドゴビー
- ナイルパーチ
- ホワイトパーチ
- ホワイトバス
- ストライプトバス
- ホワイトバスとストライプトバスの交雑生物
- ラッフ
- ヨーロピアンパーチ
- パイクパーチ
- ケツギョ
- コウライケツギョ
なお、外来生物と似た言葉に「外来種」があり混同して使われることが多いですが、明確に違う意味の言葉です。
外来生物は海外から日本に持ち込まれた生物のことを指しますが、外来種は「もともとその地域にいなかった生物」のことであり、持ち込まれた元の場所は海外に限定しません。
特定外来生物を放流するとどんな罰則があるか
外来生物法に違反して特定外来生物を取り扱った場合は、「輸入」「販売」「飼養」「放出」それぞれの行為に対して罰則が定められています。
例えば「放出」については、「許可なく野外に放ったり・植えたり・まいたりした場合」には、「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその両方(法人の場合は1億円以下の罰金)」が科せられます。
チョウザメが特定外来生物になれば上記の罰則を受けることになりますが、環境省自然環境局によれば特定外来生物追加指定を検討している生物はありません(2022年5月現在)。
こんな魚も外来生物だった
特定外来生物ではありませんが、人の手によって海外から運ばれ日本の自然界に放たれた魚として有名なのはブラックバスですね。
繁殖力が強く、いまや日本の自然界に完全に定着しています。
しかしもっと身近な魚の中にも外来生物は存在します。
例えば、食用としてもレジャー用途としても無くてはならないニジマス。
もともとはアラスカやカナダに生息しており、明治初期にアメリカから持ち込まれたと言われています。
釣り目的などで各地で養殖魚の放流が行われています。
次に錦鯉に代表される観賞用のコイは、もともとは外来魚を品種改良したものであり、自然界に放てば外来生物の扱いになります。
明らかに外来魚だろうという魚も、日本各地の川や湖で見つかっています。
例えばグッピーやエンゼルフィッシュ等の熱帯魚や、肉食魚として有名なピラニアなどです。
まとめ
少なくとも当面はチョウザメが特定外来種に指定される予定はありません。
したがって外来魚を自然界に放流する・しないは、あくまでモラルの問題ということになります。
外来生物を飼育する場合は、生態系への影響を認識して、最後まで飼い遂げる強い決意が必要ということですね。
以上、チョウザメが琵琶湖で見つかったことに関連した話題でした。