5月10日放送の「ザ!世界仰天ニュース」(日本テレビ系列)で、ベリングキャットという調査集団の話が出ていました。
このベリングキャットは、過去に数々の国際的なスクープの実績があるとのこと。
いかなる集団で、どのような手法を使ってどんな実績を上げてきたのかをまとめます。
目次
ベリングキャットとは
ベリングキャット(Bellingcat)は英国に拠点を置く民間の調査集団です。
それとともに、この集団の運営する報道Webサイトの名称でもあります。
このWebサイトは、2014年に英国人エリオット・ヒギンズ氏が、クラウド・ファンディングで資金を集めて創設しました。
ヒギンス氏は自称「引きこもりの兵器オタク」で、一日中パソコンに向かっていても何ら苦にならない性質なのだそうです。
組織としてのベリングキャットは、どの政府からも、どの企業からも独立した集団です。
30名ほどのスタッフで構成されており、その多くが調査員として活動しています。
スタッフ以外にも全世界にボランティアの協力者が多数存在するとのことです。
日本では今回「ザ!世界仰天ニュース」に取り上げられる前に、2020年5月放送のNHK BSプレミアム『デジタルハンター〜謎のネット調査集団を追う〜』という番組で、ベリングキャットの存在が紹介されました。
ベアリングキャットの由来
ベアリングキャットという名称は、イソップ寓話「ネズミの相談」(Belling the Cat)に由来します。
猫の急襲を恐れるネズミたちが「猫の首に鈴をつける」という名案を思い付くのですが、その大役を引き受ける者がおらず、せっかくの名案も実現しなかったという話です。
転じて「(他人が嫌がる)危険なことを進んで引き受ける」という意味になりました。
日本にも「猫の首に鈴をつける」という同じ意味のことわざがありますが、由来は同じイソップ寓話のようです。
ベリングキャットの調査手法
ベリングキャットは、誰にも知られていない出来事の一次スクープよりも、既報の出来事の原因や真相を暴く二次スクープを得意とします。
それは、彼らのオープン・ソース・インテリジェンス(open-source intelligence:OSINT)という手法に依るところが大きいと言われています。
オープン・ソース・インテリジェンス(OSINT)とは
OSINTとは、合法的に入手できる情報を繋ぎ合わせて結論を導く調査手法です。
ベリングキャットでは、(ひきこもりのオタクらしく)特にネット上に散在する情報を主なソースとするのが特徴です。
ベリングキャットが拠点を置く英国は、伝統的にスパイ等が暗躍する諜報活動の本場です。
映画007シリーズの影響もあるでしょうが、古くから諜報活動はHUMINT(人間を介した情報収集活動)やSIGINT(通信や信号等の傍受活動)など、合法・非合法を問わず秘密裏に情報収集する活動のイメージが強いものでした。
しかしベリングキャットのOSINTは、入手しようと思えば「自宅のパソコンで」「合法的に」入手できる情報の活用を重視します。
情報を入手する能力もさることながら、情報を分析する能力が重要となる手法です。
例えば、動画映像と地図情報や気象情報、GPS情報、IP情報等を突き合わせて現場や日時を特定するなど、ある意味ゲーム感覚に秀でた人向きな手法といえるかもしれません。
なおベリングキャットは、OSINTをはじめとする自らの調査手法をオープンにしており、調査員や記者向けの調査手法のレッスンを有料で行っています。
ベリングキャットの資金源のうち、このレッスン料の割合が最も多く、全体の35%を占めているのです。
OSINTの難しさ
OSINTの難しさは、情報を集めただけではスクープにはならない、ということです。
真実に至るまで、多くの情報を取捨選択し、断片を繋ぎ合わせてから分析する膨大な作業が必要になります。
情報の取捨選択を誤ってニセ情報を掴んでしまう恐れがある一方で、正しい情報を分析した正しい報道であっても、当事者が認めず「フェイク」で片付けられてしまう可能性もあります。
今の時代、情報はいくらでも偽造ができるということを皆が知っていますので、現行犯でないと加害者は犯行を容易に認めないのです。
情報を分析する前に、集めた情報の裏取りが大切ということになります。
ベリングキャットの主なスクープ実績
ベリングキャットの主なスクープを列記します。
- 2014年 ウクライナ上空でのマレーシア航空17便撃墜事件へのロシアの関与を暴く
- 2018年 元ロシア二重スパイ暗殺未遂事件の容疑者を特定
- 2020年 ロシア反政府リーダー暗殺未遂前にロシア毒物担当の尾行があったことを暴く
- 2022年 ロシア軍がウクライナで禁止兵器であるクラスター爆弾を使用したことを特定
ロシアに関するスクープが多いため、ヒギンス氏はロシアから命を狙われていると確信しています。
世界のどこに移動してどこで食事をするか等、行動予定は一切明かさないようにしているとのことです。
まとめ
ベリングキャットは、国際的なスクープを連発する調査報道集団です。
その調査は足で稼ぐのではなく、自宅のパソコンでネットに転がっている情報を集めて分析する手法です。
その気になれば誰でも手に入れられる情報で、国の諜報機関や大手報道機関ですらたどり着けない真相を暴くのは痛快ですらあります。
以上、英国の調査集団ベリングキャットに関する話題でした。