東京・銀座の中銀カプセルタワービルの解体作業が始まりました。
メタボリズムという建築思想のもと、末永く新陳代謝と成長を続けていくはずだったこのビルは、竣工から50年間で姿を消します。
しかし中銀カプセルタワービルのバーチャルな姿は、3Dデータとして保存されるそうです。
中銀カプセルタワービルの解体開始
2022年4月12日、中銀カプセルタワービルの解体が始まりました。
カプセルの組み合わせだから簡単に分解できるのだろうと思いますが、完了まで今年いっぱいかかる予定だそうです。
中銀カプセルタワービルとメタボリズム
中銀カプセルタワービルは、日本を代表する建築家である黒川紀章さんの初期の代表作と言われる集合住宅です。
1972年に竣工したこのビルは、正方形に近いドラム式洗濯機のような140個のカプセルを組み合わせた形状になっています。
ひとつひとつのカプセルがマンションの1軒にあたり、ちょうどユニットバスのような箱の中に住むイメージです。
設計上はカプセルの取外しが可能になっており、交換という新陳代謝を繰り返すことにより、ビルの老朽化を防ぎ末永く活用できるというコンセプトでした。
これがメタボリズムという考え方です。
メタボリズムというと中年の脂質代謝異常を連想してしまいますが、ここでは新陳代謝をテーマにした建築運動のことを指します。
1960年ころに日本から発信された運動で、建築も都市も新陳代謝を繰り返しながら変化し成長を続けていくべきだ、という理念に基づいています。
中銀カプセルタワービルは、当初の計画では25年毎にカプセルの交換を繰り返すことになっていました。
しかし実際には交換にかかるコストが高く、また一部のカプセルは取外しが困難だったため、交換は実施されませんでした。
メタボリズムの思想に基づく中銀カプセルタワービルが新陳代謝をすることなく、老朽化を理由に解体されるのは皮肉なことです。
3D化保存はどうやって?
現実には姿を消す中銀カプセルタワービルを、3Dデータとして保存するプロジェクトが立ち上がっています。
このプロジェクトは、正確な距離を計測するレーザースキャンデータと、ドローン等で撮影した2万枚以上の写真データを用いて建物全体をスキャニングし、ビルの情報をまるごと3Dデータとして保存します。
保存したデータを仮想空間に再現し、バーチャルな建築ツアーなども可能となる見込みとのことです。
まとめ
太平洋戦争後に建てられた建造物の老朽化による解体は今後増えていくものと思われます。
歴史的に価値のある建造物であっても解体が避けられないのであれば、次善の策としてVR空間での保存は意義深いと言えるでしょう。
なお中銀カプセルタワービルの分解されたひとつひとつのカプセル(ユニット)は、美術館や博物館での展示のほか、宿泊施設としての活用も検討されているそうです。
以上、中銀カプセルタワービル解体に関連した話題でした。