バイデン米政権がウクライナ東部戦線向けに提供することを表明した中に、新型ドローン121機がありました。
「フェニックス・ゴースト」と呼ばれるこの兵器の投入は、どのような意味を持つのでしょうか。
新型ドローン「フェニックス・ゴースト」とは
フェニックス・ゴーストは、米「AEVEXエアロスペース」社が開発した自爆突入型の無人航空機です。
いわゆるカミカゼドローンと呼ばれるやつですね。
カミカゼドローンといえば、やはり米国が提供した「スイッチブレード」がキーウ(キエフ)近郊で戦果を挙げたという報道がありました。
ウクライナ国防省の要請により短期間で開発したというフェニックス・ゴーストの性能は、ほとんど明らかになっていません。
米国防総省の報道官も、4月21日の記者からの質問に対して詳細を語りませんでした。
いくつかの報道や専門家の話をまとめると、フェニックス・ゴーストは以下のような特徴を持つ兵器のようです。
- ウクライナ東部戦線でのニーズに合うように急遽開発された。
- 全長・両翼とも3m未満で組み立て式。小型車両でも持ち運び可能。
- 航続時間は6時間以上(スイッチブレードは15~40分)。
- 赤外線センサー内蔵。
- 垂直離着陸が可能。
詳細を公表していないのは、もちろん対ロシア軍に対してできるだけ秘匿し、効果を最大にしたいからでしょう。
ウクライナで撃墜されたロシアのドローンをウクライナ軍が公開していましたが、センサーは日本製の市販カメラ、エンジンも市販の日本製、燃料タンクはペットボトルと、専門家が「日曜大工か、夏休みの自由研究」と例えるほどの品質でした。
ロシア軍は戦車も旧式なものが多いようですし、米国が新型兵器を投入することで、数よりも質でアドバンテージを得ることがより可能になるでしょう。
かつてソ連のベレンコ中尉が亡命してきた際に乗っていたミグ25が、時代遅れの真空管を使っていたことで話題になったのを思い出しました。
フェニックス・ゴースト提供の意味
不謹慎な話ですが、兵器の性能を実戦で確認する機会はめったにありません。
米国および開発会社は、性能評価のための様々なデータを収集できるでしょう。
そして期待通りの戦果が出た場合は、公開すれば今後の軍事産業市場で大きなアドバンテージを得られるはずです。
スイッチブレードが1機80万円を切るお値打ち価格なため、価格が公表されていないフェニックス・ゴーストと費用対効果の比較はできませんが、ウクライナ東部戦線で成果が上がれば今後の戦術を変えるほどのインパクトを与える可能性があります。
フェニックス・ゴーストで米国は実質上の参戦も
フェニックス・ゴーストの性能で特筆すべきは、航続時間の長さです。
うっそうとした森林地帯の多いキーウ近郊と異なり、ウクライナ東部は牧草地帯が広がるため接近戦に適しません。
スイッチブレードでは最大40分だった航続時間が6時間に延びたため、戦線から遠く離れた安全な場所で操縦することができます。
場所によっては、ぎりぎり国外から発進することすら可能になるのです。
米国防総省はウクライナ軍に対してフェニックス・ゴーストの操縦訓練を指導すると説明していますが、指導には留まらないであろうことが想像できます。
ロシアと闘う前線に米軍人や米国の技術者を送るのは、ロシアを刺激するだけではなく米国内の世論の反発を受けかねません。
しかし、はるか離れた安全な場所から「訓練の指導」を装って自ら操縦すれば、若葉マークのウクライナ兵が操縦するよりも大きな戦果が期待できます。
「第3次世界大戦を誘発させないために参戦しない」と言っている米国が、実質上参戦できるということを意味しているのです。
まとめ
フェニックス・ゴーストは自爆型の兵器ですので、121機だけでなく今後も急ピッチで増産し投入されていくものと思われます。
東部戦線で激しい攻撃を仕掛けているロシア軍の、特に戦車や装甲車に対してどの程度の効果があるのか注目するところです。
以上、新型兵器フェニックス・ゴーストについての話題でした。